本編を視聴するには、セットの視聴条件をご確認ください


※通信の状況により動画の配信が止まることがありますのでご了承をお願いいたします。止まった場合はブラウザを再読込するか、しばらく時間をあけて再度アクセスしてください。

技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用 第1章 伝熱工学の概要① そもそも伝熱工学とは何だろう?

東北大学名誉教授/八戸高専名誉教授:圓山重直

レクチャーシリーズ伝熱工学の基礎と応用です。「伝熱とは何だろう」を考えます。
熱力学は熱の移動速度は論じませんが、伝熱工学では、熱移動の速さを論じます。伝熱工学は非平衡状態で熱移動を扱う学術領域であり、流体の移動を議論する流体力学と類似です。
Let’s consider the question, “What is heat transfer?” Heat transfer is an academic field that deals with the transfer rate of heat under non-equilibrium conditions, and is similar to fluid mechanics, which deals with the movement of fluids.
 
 
技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用
 
 
技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用
東北大学未来科学技術共同研究センター レクチャーシリーズ
熱プロセスを習得したい人のための入門と実践的応用
講師: 圓山重直
第1章 伝熱工学の概要①
1-1. そもそも伝熱工学とは何だろう?
 
【スライド1】
まず、「第1章 伝熱工学の概要」のはじめとしてそもそも伝熱工学は何だろう?という疑問から始めます。スライドの図に示すように、温度の高い系と低い系が接続されている場合を考えます。2つの系で温度差ΔTが生じていますから、熱は系1から系2へ、伝熱量Qという形で熱が流れることになります。伝熱工学は熱がどのように伝わるか、また、熱移動の速さを論じます。伝熱工学は非平衡状態で熱移動を扱う学術領域であり、流体の移動を議論する流体力学と類似です。スライドの表は、伝熱工学で用いる用語を示しています。
 
【スライド5】
まず、「第1章 伝熱工学の概要」のはじめとして、そもそも伝熱工学は何だろう?という疑問から始めます。皆さんは、「熱を加える」または「加熱する」ことや、「冷却する」ことが熱プロセスにとっても重要だと認識していると思います。機器の開発で均一に加熱することや、熱が伝わらないようにする断熱技術は重要です。
では、熱てなぁに?という質問には、中々明確な答えを思いつかない方も多いのではないでしょうか。皆さん、熱って何だと思いますか?
私は、大学の熱力学という講義で、「熱は温度の高い系から温度の低い系に移動するエネルギーの一形態である」と教えていました。これでも、なんだか難しそうです。実は、熱の本質はかなり難しい概念なんです。皆さんはとりあえず「熱とは温度に関係するエネルギーの一つである」と考えてください。
では、「熱力学」と「伝熱工学」はどこが違うのでしょうか。
先ず「熱力学」について考えてみましょう。熱力学は、理学や化学を勉強した方が習っている基本的な学問で、熱と物質・エネルギーの関係を明らかにするものです。熱力学は、はじめの状態から熱が移動した後で平衡状態になった系を議論します。「平衡状態」とは、系の中ですべてが釣り合っていて、これ以上変化しない状態を言います。熱力学では、平衡状態1となった系から熱や物質・力を系に加えて平衡状態2となった系の変化を議論します。しかし、熱力学では平衡状態1から2への状態変化の過程については議論しません。熱力学では、状態1から2に変化するのに1年かかっても良いし、1msで変化が起きても本質的には関係ないのです。
 
【スライド6】
それでは、伝熱工学を改めて考えてみましょう。例えば、温度の高い系1と低い系2が接続されている場合を考えます。2つの系で温度差ΔTが生じていますから、熱は系1から系2へ、熱の移動速度である伝熱量Qという形で熱が流れることになります。伝熱工学は熱がどのように伝わるか、また、熱移動の速さを論じます。伝熱工学は非平衡状態で熱移動を扱う学術領域であり、流体の移動を議論する流体力学と類似です。
まず、スライドの図に示すように、温度T1の高い系と温度T2の低い系が繋がっている場合を考えます。それぞれの系はE1、E2というエネルギーを保有しています。温度の高い系と低い系が接続されて温度差ΔTが生じていますから、熱は系1から系2へ、伝熱量Qという形で熱が流れることになります。Qの単位はWまたはJ/sとなり、熱の移動速度Qは時間の関数となっています。
急速加熱や急速冷却のように、熱の移動を早くする伝熱促進や、熱の移動を極力少なくする断熱技術と、伝熱工学は密接に関わっています。熱力学では、熱の移動量については論じますが、熱移動の速さについては議論しません。
伝熱工学で用いる用語を考えましょう。伝熱はエネルギーを扱う工学なので、熱量Eは需要な指標です。それに付随する温度T、単位は℃やK(ケルビン)を用いることが多いですが、重要な指標です。熱の移動速度を扱うので伝熱量Q(WまたはJ/s)は、伝熱工学で扱う重要な指標です。熱力学では伝熱量は重要ではありません。さらに、伝熱工学で重要な指標として、単位面積当たりの伝熱量で熱流束qを多く用います。
 
【スライド7】
機械工学で重要な学術領域である流体力学について考えてみましょう。スライドの図に示すように、系1と系2で構成される2つの容器に入った液体がパイプを通じて流れている場合を考えます。系1は圧力の高い系として考え、系2は圧力の低い系とすると、二つの系には圧力差が生じますので、流体は圧力の高い系から圧力の低い系へ移動し、その流量は流量mとして表示されます。
流体力学でよく用いられる用語として、流体の質量M、系の圧力p、流体の単位時間当たりの移動量mなどがあげられます。また、流体の単位時間当たりの移動量が流速(m/s)でよく用いられます。
ここで、伝熱工学で用いられる用語を比較すると、流体力学と伝熱工学の共通点が良く分かります。
系が持つエネルギEと質量M、系のポテンシャル量であるスカラー量の温度Tと圧力p、その微分、つまり、温度差や圧力差から導き出される、ベクトル量つまり方向性も持つ、「伝熱量Qや熱流束q」に相当するものが「流量mと流速v」です。このように、伝熱工学と流体力学は極めて類似な学問領域であることが分かります。
 
【スライド8】
これまで、熱力学、伝熱工学、流体力学の概要を述べてきました。それらの学術領域の関係はどうなっているのでしょうか。スライドの図は、熱力学、伝熱工学、流体力学の関係性を示したものです。熱力学は工学領域だけでなく幅広い学術領域に波及しているので、少しはみ出しています。熱力学、伝熱工学、流体工学は、機械工学、化学工学の分野では、熱流体工学として統合されるでしょう。
熱力学は物質とエネルギーの関係を明らかにする学問なので、伝熱工学と流体工学と密接な関係があります。例えば、伝熱工学と熱力学は特に沸騰・凝縮伝熱との関係が強く現れます。流体工学と熱力学は音速を超えた高速の気体流を扱う気体力学で密接な関係を持ちます。伝熱工学で扱う沸騰と流体力学で扱うキャビテーションは、現象的には同じですが、熱エネルギーに主体を置くか、運動エネルギーに主体を置くかで、異なった学問領域になります。伝熱工学と流体力学は、例えば、あとで説明する対流熱伝達で特に密接な関係性を持っています。
これまで、熱力学、伝熱工学、流体力学の概要を述べてきました。熱力学は平衡系の力学、伝熱工学と流体力学は非平衡系の力学に分類されるでしょう。

関連動画