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技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用 第1章 伝熱工学の概要④ サウナでやけどをしないわけ

東北大学名誉教授/八戸高専名誉教授:圓山重直

レクチャーシリーズ伝熱工学の基礎と応用です。
100℃のお湯に手を入れると大やけどを負いますが,100℃のサウナに入ってもやけどをしないのはなぜでしょうか。これは、2つの物体の非定常熱伝導問題です。
If you put your hand in water at 100°C, you’ll suffer severe burns, but you don’t get burned when you enter a sauna at 100°C?  Why? This is an example of “transient heat conduction” between two objects.
 
 
技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用
 
 
今回の要約
技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用
東北大学未来科学技術共同研究センター レクチャーシリーズ
熱プロセスを習得したい人のための入門と実践的応用
講師: 圓山重直
第1章 伝熱工学の概要④
1-4. 伝熱工学の質問C サウナでやけどをしないわけ
 
【スライド1】「第1章 伝熱工学の概要」の4回目です。今回の伝熱工学の質問は、「サウナでやけどをしないわけ」です。100℃のお湯に手を入れると大やけどを負いますが,「100℃のサウナに入ってもやけどをしない」のはなぜでしょうか。今回は、2物体の非定常熱伝導問題としてこの理由を考えます。
【スライド4】皆さんの中には、サウナに入った方がいると思います。温泉やトレーニングジムのサウナに入り、その温度計を見ると90℃~100℃を示している場合があります。でも、皆さんはサウナで火傷をしたことはないと思います。温度計が間違っているわけではなくその時のサウナの気温は100℃近くです。でも、沸騰している100℃のお湯に手を入れると大やけどを負います。
今回の質問は、「100℃のお湯に手を入れると大やけどを負いますが,100℃のサウナに入ってもやけどをしないのはなぜでしょうか」 です。この質問に対しては、色々な解答が考えられると思います。今回の質問では、サウナに入った直後や、お湯に手を入れた直後の現象に着目します。
【スライド5】サウナに入った直後の現象を伝熱工学的に考えると、答えは次のようになります。
空気と人体では熱伝導率と密度・比熱が大きく違うため,サウナでは空気と皮膚が接した直後の接触面の温度は人体温度に近い値になります。一方、水の熱伝導率と密度・比熱は人体と類似なため,熱湯中では接触面の温度が人体と熱湯の平均温度程度になり、大やけどを負うことになります。
【スライド6】この現象についてもう少し詳しく考えてみましょう。ヒトがサウナや熱湯に入った直後の熱の伝わり方は、異なる物体が接触した直後の非定常熱伝導問題と考えることができます。皮膚が物体に接触した直後の皮膚表面温度は、熱湯では72.2℃になるのに対して100℃のサウナでは皮膚表面温度は0.3℃しか上昇しません。細胞は70℃以上で壊死すると言われているので、熱湯では瞬時にやけどを負いますが、サウナでは表面温度の上昇が皮膚温度に比べて、わずかであることが分かります。
皮膚内への温度伝播を、数値シミュレーションで非定常熱伝導解析をしてみました。その結果が、スライド右の図です。空気と皮膚内部の非定常温度分布では、空気と皮膚が接触した直後は接触面の温度は一定であり、非定常熱伝導で熱が皮膚内部に伝播していることが分かります。先ほど述べたように、皮膚表面温度の温度上昇はわずかであり、40℃のお風呂に入った時の温度より低いのです。一方、100℃のお湯に入った時の皮膚の非定常温度分布は、接触面は70℃以上あり、皮膚表面は瞬間的に壊死します。時間と共に熱が皮膚内部に伝播し、火傷の深さが深くなっていくことが分かります。
以上は、サウナに入った直後の伝熱現象です。サウナに長時間いると、対流伝熱とふく射伝熱で熱が伝わります。この時も、皮膚の熱伝導率・密度・比熱が空気と異なるので、表面温度はゆっくり上昇してゆきます。サウナに入って約5分以上すると、体内の血流が増大し、汗をかき始めます。この汗が蒸発してさらに皮膚温度を低下させることになります。
【スライド7】この現象は皆さんの身の回りの多くの熱現象を説明してくれます。例えば、寒い部屋でコンクリートの床をはだしで歩くと冷たく感じますが、絨毯の上を歩くと温かく感じます。これは、コンクリートや絨毯の初期温度が異なるわけでなく、ヒトの皮膚が接触したときの接触面温度が、コンクリートと絨毯で異なるためです。絨毯の繊維には空気が多量に含まれており、絨毯の熱物性が空気に近くなっています。したがって、絨毯との接触時に接触面が皮膚温度に近い温度になり温かく感じるのです。
同様に、冷たい金属に触った時冷たく感じますが、断熱材に触れた時に温かく感じるのも同じ原理です。皆さんが服を着るとき暖かく感じるのも同じ原理です。寒い部屋にある服は温度が高くなってるわけではありません。服は空気を多く含んだ断熱材のため、服が皮膚と接触すると接触面の温度が皮膚に近い温度になり、暖かく感じます。もし、汗でぬれたシャツなどを着ると、服に含まれている水分のために、冷たい水に手を突っ込むのと同じように、服を着た瞬間ひやりと感じるのです。

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