本編を視聴するには、セットの視聴条件をご確認ください


※通信の状況により動画の配信が止まることがありますのでご了承をお願いいたします。止まった場合はブラウザを再読込するか、しばらく時間をあけて再度アクセスしてください。

技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用 第1章 伝熱工学の概要③ 冷たいゆで卵が温かくなる?

東北大学名誉教授/八戸高専名誉教授:圓山重直

レクチャーシリーズ伝熱工学の基礎と応用です。熱湯で加熱したゆで卵を冷水で冷やした後で放置すると、ゆで卵が再び熱くなる現象を考えます。これは、非定常熱伝導と対流熱伝達が作用して、このような現象が起きるのです。
Consider the phenomenon where a hard-boiled egg, after being cooled in cold water, becomes hot again. This phenomenon occurs due to the combined effects of transient heat conduction and convective heat transfer.
 
 
技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用
 
 
今回の要約
技術者と研究者に向けた伝熱工学の基礎と応用
東北大学未来科学技術共同研究センター レクチャーシリーズ
熱プロセスを習得したい人のための入門と実践的応用
講師: 圓山重直
第1章 伝熱工学の概要③
1-3. 伝熱工学の質問B 冷たくなったゆで卵が温かくなる?
 
【スライド1】「第1章 伝熱工学の概要」の3回目でとして、伝熱工学の質問B  一度冷たくなったゆで卵が再び暖かくなる現象を考えます。沸騰した水でゆで卵を作ってから冷水で冷やした後、放置すると、冷たい卵が再び暖かくなることがあります。熱力学では一度冷たくなった物体が何もしないで暖かくなることはありません。
【スライド4】この現象を検証するために、私たちのグループではゆで卵の実験を行いました。その実験ビデオを紹介します。
常温の二つの卵について、サーモビュアーで表面温度の変化を観察します。
①1つの卵を沸騰した熱湯中に入れて20分間加熱します。③卵は熱々になり、中心部まで加熱された「固ゆで卵」になります。
③次に、この熱々の卵に冷水をかけて、2分間急速に冷却します。
④冷却した後の卵は、常温の卵より低温になっています。
⑤この卵を空気中に放置すると、
⑥徐々に卵の温度が上がっていきます。ついには卵の表面温度は40℃以上になります。
引き続き面温度の変化を見ると卵の温度は徐々に下がって、室温と同じになります。
【スライド5】一度冷たくなった卵が、何もしないで温度が上がるのはなぜでしょうか。熱力学では、一度温度が下がった物体は、何もしなければ、室温以上にはなりません。しかし、このビデオで示すように室温より高温になります。この理由を考えててみましょう。
②沸騰した熱湯の中で内部まで均一な高温になったゆで卵となります。
③その卵を冷水による大きな熱伝達率の対流熱伝達によって、表面を高速にひやすと、熱伝達率が大きいために、
④表面は冷たくなりますが、内部は高温になったままです。
⑤この卵を熱伝達率の小さい空気中に放置すると、
⑥非定常熱伝導によって内部の熱が低温の表面に伝わり表面温度が再び上昇することになります。 
ここで、重要な言葉として対流熱伝達と熱伝達率があります。熱伝達率は対流熱伝達で冷却・加熱する度合いの指標として使われます。
【スライド6】この温度変化を非定常熱伝導の数値解析でシミュレーションしました。
①卵を沸騰した熱湯の中に入れると表面温度は急激に上がりますが、中心部はゆっくり温度が上昇し、20分後には90℃以上となって、卵の温度はほぼ均一になります。
③この卵を冷たい流水で冷やすと表面温度が2分間で急激に下がります。この時の熱伝達率は約400W/(m^2K)と表されます。この時卵の中心部はまだ100℃程度の高温のままです。
⑤次に、表面が冷えた卵を空気中に置きます。この時、空気の自然対流とふく射を合わせた熱伝達率は10W/(m^2K)となり、水の強制対流熱伝達率に比べるとかなり小さくなります。
⑥この状態では、卵の内部の熱が非定常熱伝導により伝わって、卵表面の温度が上昇することになります。その後、時間と共に卵全体の温度が低下して最終的には、周囲温度と同じ値になります。
【スライド7】非定常熱伝導解析では卵内部の温度分布の時間変化も検討しました。ゆで卵を水で急冷し、
④空気中に置いた直後は、卵表面近くは大きな温度勾配が生じています。
⑤この温度勾配による非定常熱伝導で表面に熱が伝わります。
⑥卵の表面の熱伝達率が大きくないために、卵の表面温度が時間と共に上昇します。
その後、卵内部の温度が低下するために、卵表面の温度も徐々に低下していくことになります。
この様に、熱伝伝導と対流熱伝達がお互いに関係しあう場合が、多くの熱現象で見られます。
おいしいゆで卵をどのようにして作るかという論文が2024年に発表されました。この論文では、非定常熱伝導を利用してどのように加熱したらゆで卵が美味しくなるか、科学的に議論しています。興味のあるかたは下記をご覧ください。

Lorenzo,E. D., et al., Periodic cooking of eggs, Communications Engineering, (2024),
https://www.nature.com/articles/s44172-024-00334-w

関連動画